東京都稲城市が「知られざるカレーの街」だとPRしている。市内の3分の1を超す飲食店にカレーのメニューがある。そば屋やカフェなど様々な店を巡れるのが魅力らしい。1月末までスタンプラリーを開催中で、全店制覇した認定証「稲城マスター・オブ・カレー」はまだ、9人しかもらっていないという。
◇
「なぜかカレーの店が多いんですよ」。同市でフリーペーパーを発行する種田匡延さん(55)は、市内の観光関係者らでつくる「カレーで稲城を盛り上げる会」の代表だ。同会の調べでは、市内にある飲食店約250店のうち約90店にカレーのメニューがある。
種田さんは「稲城にはカレーを受け入れる土壌がある」と分析する。かつては養鶏が盛んで、鶏の骨でダシを取るカレーが家庭料理としてよく食べられてきたという。
稲城は住民が「若い」という特徴もある。都の統計によると、市の住民の平均年齢は43・7歳で、都全体(45・02歳)や23区全体(44・56歳)より若く、都内26市の中では最も若い。市経済観光課は「子育て世代が多い。お店を出すなら、家族連れに受け入れやすいカレーをメニューに入れるのでは」。
種田さんらは2018年、市内のカレーを集めた「カレー・フェスタ」を開催。その後もカレー店が徐々に増えた。今年はコロナ禍で一堂に人を集めるイベントはできないが、感染防止策をとるお店を回るスタンプラリーにしたという。
JR南武線稲城長沼駅近くのそば屋「更科京屋」は、創業した1984年からカレーライスを出す。2代目店主の松山孝之さん(47)が3日間煮込んで作る「牛すじカレー」(税込み750円)。そばつゆが香る一品だ。「作るのが大変なんで、あんまりたのんで欲しくないけど」と笑う。
南武線の矢野口駅前に一昨年オープンしたカフェ「NiNiGi CAFE(ニニギ カフェ)」の売りも、カレーだ。経営者の川瀧敏彦さん(55)が独自に12種類のスパイスを調合し、「キーマナスカレー」(税抜き1100円)などを出す。「カレーは廃れない。カレーの街に貢献できてうれしい」
「カレーで稲城を盛り上げる会」の顧問でもある高橋勝浩市長(57)は、市内のカレーを食べ歩いている。「思いがけず、新しい味に出会える」という。
スタンプラリーの台紙は稲城長沼駅前のアンテナショップ「ペアテラス」で。対象は21店舗で、3店、7店、15店分集めるごとに、景品ももらえる。(前川浩之)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル